コラム

カメラ外観検査に必要な照明・レンズの選び方 

なぜ外観検査では「カメラより照明とレンズ」が重要なのか

カメラ外観検査を検討する際、多くの担当者が最初に注目するのはカメラ本体の画素数やメーカーですが、実際の検査精度を大きく左右するのは照明とレンズの選定です。外観検査は人の目の代わりにカメラで「違い」を見つける仕組みですが、その違いを生み出しているのは光の当たり方と、対象物をどのような倍率や歪みで写すかというレンズ特性です。どれだけ高性能なカメラを使用しても、照明条件が不適切であれば傷や汚れは背景に埋もれてしまい、逆に過剰な反射や影によって誤検出を招くこともあります。外観検査で安定した結果を出すためには、カメラ選定よりも先に、照明とレンズを含めた撮像環境全体を設計する視点が不可欠です。

外観検査における照明選びの基本的な考え方 

照明選びの第一歩は、検出したい不良が「明るく見えるべきか」「暗く見えるべきか」を整理することです。たとえば表面の傷や打痕は、周囲より暗く見せることでコントラストが生まれますが、異物付着や印字欠けなどは逆に明るく浮かび上がらせる方が検出しやすくなります。照明の役割は対象物を均一に照らすことではなく、不良と良品の差を最大化することにあります。そのため照明の角度、拡散性、光の色、配置位置を組み合わせて検討する必要があります。

代表的な照明方式と向いている検査内容

外観検査でよく使用される照明には、同軸照明、リング照明、バー照明、ドーム照明などがあります。同軸照明はカメラの光軸と同じ方向から光を当てるため、平滑な表面の微細な欠陥検出に適しており、印刷物や金属板のキズ検査で多用されます。一方リング照明は斜め方向から光を当てられるため、凹凸を強調しやすく、成形品の欠けやバリ検出(不用な突起物の検出)に向いています。ドーム照明は反射を抑えた均一な光を作れるため、光沢部品や鏡面部品の検査で効果を発揮します。このように照明方式は万能ではなく、検査対象と不良内容に合わせて選択することが重要です。 

光の色と波長が検査結果に与える影響

照明の色も外観検査の精度に大きく影響します。白色照明は汎用性が高い一方で、特定の色差を見分けたい場合には不向きなケースがあります。たとえば赤色印字の欠け検査では赤色照明を使うと印字が背景に溶け込みやすくなり、逆に青色や緑色照明を使用することで印字部分が暗く写り、コントラストが向上します。また近年では赤外照明や紫外照明を用いて、人の目では見えない特徴を強調する手法も増えています。照明色は単なる見た目の問題ではなく、画像処理アルゴリズムの安定性にも直結する要素です。

レンズ選定が外観検査精度を左右する理由 

照明と同様に重要なのがレンズの選定です。レンズは単に被写体を拡大して写すだけでなく、歪みや解像度、被写界深度(写真においてピントが合っているように見える範囲の奥行きのこと)といった要素を通じて検査結果に影響を与えます。特に外観検査では、画面の中心と周辺で寸法や形状が変わって見える歪みがあると、誤判定の原因になります。そのため一般的な監視用途のレンズではなく、外観検査向けに設計されたマシンビジョンレンズ(検査・測定の自動化に特化した工業用レンズ)を選ぶことが推奨されます。 

焦点距離と視野の考え方

レンズ選定でまず考えるべきは、検査対象全体を一度に写すのか、特定箇所を拡大して見るのかという視野の設計です。焦点距離が短いレンズは広い範囲を写せますが歪みが出やすく、逆に長い焦点距離のレンズは歪みが少ない反面、設置距離が長く必要になります。装置内の限られた範囲や検査の許容時間を踏まえながら、必要な解像度を満たせる焦点距離を選定することが重要です。

被写界深度とピントの安定性 

生産ラインでは製品の高さばらつきや位置ズレが避けられません。その際に被写界深度が浅いレンズを選んでしまうと、わずかなズレでピントが外れ、検査精度が不安定になります。被写界深度を深く取るためには絞りを絞る必要がありますが、その分照明を強くする必要があり、照明設計とレンズ設計は常にセットで考える必要があります。 

照明とレンズをセットで考える実践的な選び方

外観検査で失敗しやすいのは、照明とレンズを個別に選定してしまうケースです。たとえば高解像度レンズを導入しても、照明が不足していればノイズが増え、結果として検査精度は向上しません。逆に強力な照明を用意しても、レンズの歪みや解像力不足によって細かな欠陥を捉えられないこともあります。実際の導入現場では、テスト撮像を行いながら照明の種類や角度を変え、最終的に最適なレンズ仕様を決定するプロセスが欠かせません。 

導入前に押さえておきたい現場視点のポイント 

カメラ外観検査は理論通りにいかないケースが多く、量産環境では温度変化や汚れの付着、照明の経年劣化といった要因も無視できません。そのため初期検討段階で「理想的な画像」だけを見るのではなく、実際のライン環境を想定した評価が重要です。照明の交換性や位置調整のしやすさ、レンズの再調整工数など、運用面まで含めて検討することで、導入後のトラブルを大幅に減らすことができます。