目視検査はAIで自動化できる?導入前の確認事項
自社の目視検査をAI(人工知能)で自動化できるかは、製品名だけでは決まりません。見つけたい不良が画像に写るか、良品と不良品の境界を共有できるか、実際の生産速度で検査を続けられるか。こうした条件を、現物に合わせて確かめる必要があります。
いきなりカメラの型番を調べなくても大丈夫です。まずは、検査台の上にある製品と、担当者がどこを見ているかを整理しましょう。この記事では、株式会社シーディアイが展開するカメラソリューションブランド、VISION WORKSの事前チェックシートに沿って、導入前の確認事項をお伝えします。
AI外観検査とは、製品をカメラで撮影し、AIが画像から学習した特徴を使って、キズや汚れなどを調べる方法です。良品と不良品の画像から特徴を学ぶ方式のほか、良品の画像を学び、通常と異なる箇所を探す方式もあります。後者は異常検知と呼ばれます。MVTecの公式解説でも、良品画像を基に画像内の違いを検出する仕組みが紹介されています。
ただし、AIが見つけた違いを、そのまま製品の不良と扱えるとは限りません。たとえば、成形品の模様の違いが品質上は問題なくても、画像では目立つかもしれません。検査担当者と一緒に、取り除くべき違いと許容できる違いを確認する作業が必要です。
最初に決めたいのは、自動化する検査の範囲です。製品の全面を調べたいのか、特定の面のキズを確認したいのか。部品の付け忘れを見たいのか。ここが決まると、撮り方や判定方法について、具体的に話せるようになります。
撮像(検査に使う画像の撮影)では、製品の材質と形状が確認の入口になります。光沢の強い金属、透明な樹脂、凹凸の多い部品では、光の反射や影の出方が違います。同じカメラでも、照明の位置や撮影する方向によって、確認できる特徴は変わります。キーエンスも、対象物を確実に撮影するためのレンズと照明の選定を解説しています。
ここで、現物を見るときの動作を思い出してみてください。担当者が製品を傾けたり、顔を近づけたり、裏返したりしていませんか。その動きは、撮影条件を検討する手がかりです。傾けたときにだけ見えるキズなら、その見え方をカメラで再現できるか試します。
図1 照明と撮影方向を検討する考え方

試すときは、良品も一緒に撮って比べてください。不良だけが目立っていても、良品の模様や反射まで不良と判定しては困ります。両方の見え方を確認して、撮影条件を絞り込みましょう。
見つけたい不良は、できるだけ具体的に書き出しましょう。キズなら、大きさだけでなく、発生する面や方向、周囲との見え方も確認したいところです。色ムラであれば、どの範囲を、どの見本と比べて判断するのかを整理します。数値が決まっていなければ、まず実物や写真を残すところから始めて構いません。
透明な製品の内部や、カメラから見えない裏側は、通常の表面撮影だけで確認できるとは限りません。必要な面が写る配置にする、撮影方法を変える、別の検査方法を検討するといった確認が先になります。画像に必要な情報があるかを調べる段階で、AI化できる・できないを急いで決める必要はありません。
目視検査を自動化する方法には、ルールベース(人が決めた条件で画像を判定する方式)もあります。部品があるか、位置が許容範囲に入っているかなど、条件を明確にできる検査は、この方式も候補になります。一方、キズや汚れの形が毎回異なる検査では、AIを含めて検証する余地があります。キーエンスの選定ガイドでも、不良の種類や必要な速度から方式を選ぶ考え方が説明されています。
表1 検査内容から考える方式と確認事項
| 検査の例 | 検討する考え方 | 先に確認すること |
| 部品の有無や位置ずれ | ルールベースを検討 | 正常な位置と許容範囲、位置のばらつき |
| 形や濃さが一定でないキズや汚れ | AIによる判定を検討 | 許容できる違いと、不良として扱う違い |
| 寸法や面積で合否が決まる検査 | 測定と条件判定を検討 | 必要な測定精度と、画像で測れる範囲 |
| 光沢面や透明な製品の検査 | まず撮影条件を検証 | 反射や影を調整し、対象の違いが写るか |
| 有無確認と表面キズが混在する検査 | 検査項目ごとに方式を組み合わせる | 各項目の判定基準と、必要な処理時間 |
表は検討の入口を整理したものです。特定の製品や不良について、対応可否を保証するものではありません。AIとルールベースを組み合わせる方法もあり、VISION WORKSは両方を使うハイブリッド検査に対応しています。どの部分に何を使うかを、対象の条件に合わせて考えます。
方式を選ぶ前に条件を整理したい方は、AI外観検査事前チェックシートをご活用ください。検査する物の外観、不良の種類や大きさなどを、10の質問に沿って書き出せます。分からない項目は空欄でも構いません。
相談の準備では、誰が見ても不良と分かる製品に加えて、判断に迷う製品も残しておくと話を進めやすくなります。限度見本(良品と不良品の境界を示す実物サンプル)や検査基準書があれば、一緒に確認しましょう。見本ごとに、なぜその判定にしたかを短く添えるのがおすすめです。
たとえば、同じように見えるキズでも、外から見える面では不良、組み立て後に隠れる面では許容という基準があるなら、その違いも必要な情報です。キズの写真に、検査する面と判定理由を書き添えてみてください。撮影する範囲や、判定条件の打ち合わせに使えます。
不良品が少ない場合は、手元にある数と種類をそのまま伝えましょう。良品画像を使って学習する方式もありますが、狙った不良を検出できるかは別途確かめる必要があります。必要なサンプル数を一律に決めず、どんな不良を、どの条件で評価するかから相談する進め方が現実的です。
タクト(製品1個の処理に使える時間)も確認します。製品を止めて撮れるのか、流しながら撮るのかによって、検討する撮影方法が変わります。判定の処理時間だけでなく、位置をそろえる時間や、不良品を取り除く時間も含めて考えておきたいところです。
さらに、設置場所の明るさ、粉塵や油煙、振動、カメラと照明を置ける空間を見ておきます。Cognexの公式文書でも、カメラ位置や照明の変化、昼間に窓から入る光が検査結果に影響し得ることが説明されています。撮影台で確認できた条件を、実際の現場でも維持できるかが確認点です。
表2 相談に持ち寄る情報の整理例
| 確認項目 | メモしておく内容 |
| 製品の特徴 | 名前、材質、形状、品種数と切り替え頻度 |
| 検出したい不良 | 種類、発生する面、最小の大きさ、分かる範囲の許容基準 |
| 手元の見本 | 良品、不良品、判断に迷う見本、基準書や写真 |
| 現在の検査 | 目視や測定器などの方法、困っていること |
| ラインと設置環境 | タクト、停止できるか、明るさ、汚れや振動、設置空間 |
| 検査後の作業 | 不良品の取り除き方、再検査の方法、残したい記録 |
全部をそろえてからでないと相談できない、ということはありません。まずは、分かっている条件と未確認の条件を分けてみてください。社内で調べることと、実物を使って検証することが区別できれば、次の作業を決めやすくなります。
条件を整理したら、実物を撮影し、必要な違いが写るかを確かめます。その後、見本の判定を比べ、本番のライン速度や環境でも使えるかを確認します。次の図は、導入可否を考えるための確認の流れです。検証の途中で、撮り方や基準の整理に戻ることもあります。
図2 導入前に確認する流れ

判定評価では、見逃し(不良品を良品と判断すること)と、過検出(良品を不良品と判断すること)を分けて確認します。判定が合った割合だけを見て終わらず、どの不良を見逃したか、どの良品を取り除いたかを調べると、現場での使い方を話し合いやすくなります。Cognexも、既知の良品・不良品画像に対して期待する判定が得られるかを試す方法を説明しています。
また、検査が終わった後の行き先まで決めておきましょう。判定に迷った製品を誰が確認するか、不良品が続いたときにどう知らせるか。担当者が動ける手順まで確認して、初めて普段の作業に組み込めます。
VISION WORKSは、愛知県一宮市に本社を置く株式会社シーディアイのカメラソリューションブランドです。AIとルールベースを組み合わせた検査に加え、前後工程の自動化設備まで自社で開発・製造する体制を紹介しています。
導入の流れでは、検査課題の聞き取りや現場調査の後に、PoC(本格導入の前に実現性を確かめる検証)を行い、本番ラインでの運用検証へ進みます。カメラや判定ソフトと、現場の装置をどうつなぐかも含めて検討できます。詳しくは、VISION WORKSの「導入までの流れ」をご覧ください。
Q1 製品の写真だけでAI化できるか分かりますか
写真は相談の出発点になりますが、写真だけで最終判断できるとは限りません。小さなキズ、光沢、裏側の確認などでは、実物と照明を使った検証が必要になることがあります。現在の撮り方と、見つけたい不良が分かる写真を準備しましょう。
Q2 不良品がほとんどなくても相談できますか
相談できます。手元の良品や不良品の種類と数、困っていることを伝えてください。良品画像を使う学習方式もありますが、実際の不良への対応は検証が必要です。サンプル不足だけで検討を止めず、何をどう集めるかを相談しましょう。
Q3 今ある検査カメラをそのまま使えますか
現在の機器仕様、画像の取得方法、撮影できる範囲を確認して検討します。カメラを流用できても、照明や設置方法の調整が必要な場合があります。機器の型番と現在の画像、現場の写真があれば、確認の材料になります。
Q4 導入すると人の確認は不要になりますか
人が担当する範囲は、検査対象と運用の決め方によります。判断に迷う製品の再確認、新しい不良が出たときの対応、設備の点検なども考える必要があります。自動化したい作業と、人が確認する作業を分けて検討しましょう。
Q5 費用を知るには何を伝えればよいですか
製品と不良の種類、検出したい大きさ、ライン速度、設置環境、搬送や排出まで依頼したいかを整理すると相談を進めやすくなります。事前チェックシートには、費用を左右する要因も掲載しています。条件を確認せずに、一律の金額をお伝えすることはできません。
Q6 チェックシートで導入可否を判定できますか
チェックシートは、現場の状況と次の進め方を整理するための資料です。AIに向くか、ルールベースを検討するか、まず撮影テストが必要かを考える目安になりますが、導入可否の判定や性能保証を行うものではありません。
目視検査のAI自動化を考えるときは、製品と不良を具体的にするところから始めましょう。見つけたい違いが画像に写るか、良否の基準を共有できるかを確かめ、そのうえでライン速度や検査後の作業まで確認します。検査内容によっては、ルールベースや、AIとの組み合わせも候補になります。
最初から、きれいな仕様書に仕上げなくても大丈夫です。基準がまだ曖昧、サンプルが少ない、ラインの条件を調べきれていない。そんな現在地も、次の確認事項を決めるための材料になります。
VISION WORKSの「AI外観検査事前チェックシート」は、製品の外観、不良の種類と大きさ、判定基準、ライン速度などを10の質問で整理できます。品質管理と生産技術の打ち合わせや、社内での検討準備にご活用ください。分かるところから記入して、自社の検査について確認したいことをまとめてみませんか。
