AI外観検査導入事例|ホイール・金属・樹脂の検査現場
ホイールを一本ずつ検査台に載せ、照明の向きを変えながら傷を探す。熟練の検査員が続けてきたこの作業を、いまはAIとロボットに任せている現場がある。株式会社シーディアイ(以下、CDI)のVISION WORKSが手がけたホイール検査は、20項目以上の基準をシステム化した事例だ。実際の製造現場でAI外観検査がどう使われているのか。金属部品や樹脂成形品も交え、素材ごとに違う検査の中身を、開発事例からたどっていく。
導入が進んでいるのは、人の目だと判定がぶれやすい工程だ。光沢のある素材、微細な色ムラ、入り組んだ形状。ルールベースの画像処理では「ここからNG」と線を引きにくい対象ほど、AIの出番になる。
外観検査とは、製品の表面をカメラで撮影し、画像処理やAIで良品と不良品を見分ける工程のことである。VISION WORKSはこれを、カメラや照明といったハードから、判定ソフト、結果を映すダッシュボードまで一体で作っている。対象は自動車部品、金属加工品、樹脂成形品と幅広い。ただし共通のパッケージを当てはめるのではなく、ワークごとに撮り方も判定モデルも組み直す。ここが肝になる。
「うちの製品でもAI化できますか」。商談でいちばん多い問いだ。答えは、正直なところ現物を見ないと言えない。カタログの精度値を眺めても判断は難しく、むしろ形や素材が近い事例を見たほうが話は早い。というわけで、まずはホイール検査から見ていきたい。
ホイール検査では、20項目以上ある検査基準をAIとロボットの組み合わせでまわしている。かつては熟練者でないと見分けられなかった微細な傷や打痕まで、複数のカメラと照明条件を切り替えることで拾えるようになった。
きっかけは、どこの現場にもある悩みだった。ベテランが足りない。しかも人によって「良品」の線引きがぶれる。アルミホイールはやっかいで、光沢面にきらめきや反射が混じる。傷なのか、ただの照り返しなのか。検査員は照明の向きを変え、角度を変え、何度も覗き込んだ末に、最後は勘で判を押していた。
VISION WORKSが組んだのは、表面の凹凸を際立たせるドーム型照明と、ロボットでワークをつかんで動かしながら撮る仕組みだ。判定ロジックは、過去の検査基準書に貯まったノウハウを土台にした。少ない不良サンプルからでも精度を出せる専用AIモデルを作り込んでいる。検査時間はおよそ3割短縮、見逃しも大きく減った。とはいえ、撮像条件を詰めるのに数週間。素材やラインが変われば学習もやり直す。入れたら終わり、という代物ではない。
金属と樹脂では、光の返り方がまるで違う。だから照明の設計もそれぞれ別に組む。ひとくくりに「外観検査」と呼ばれがちだが、素材が変わればやることが変わる、というのが現場の実感だ。
金属、たとえばヘアライン加工の面。普通に照らすと、傷なのか元の筋目なのか区別がつかない。ここでVISION WORKSはPMS(Photometric Stereo)照明を使い、表面の凹凸だけを抽出して傷を浮かせる。立体形状で影が出る対象なら、3Dカメラで深さを測り、影に惑わされず形そのものを見る方法もとる。
樹脂は逆の難しさがある。透明や乳白色はコントラストが低く、反射光ではそもそも欠陥が見えない。特殊な波長の透過照明や、角度を絞った照射で、ようやく欠陥が姿を現す。そこへ高温多湿、粉塵、油煙が加わる現場もある。過酷な環境では、防塵・防湿の筐体やエアパージでレンズを守る。要するに、AIを乗せる前の光学系づくりに、いちばん頭を使うことが多い。既製品で足りると思っていた担当者が、蓋を開けたらワーク専用の作り込みが要った。そんな話は珍しくない。
いきなり全工程を自動化しにいかないこと。対象を絞ったPoC(概念実証)から始めるのが現実的だ。VISION WORKSも、構想、PoC、運用検証、本開発、導入・運用と段階を踏んで進める。
構想の段階でやるのは、どの不良を、どの精度で見たいのかを現場でヒアリングして整理することだ。PoCではカメラや照明を選び、簡単なアルゴリズム検証を回して、性能評価報告書にまとめる。「そもそも技術的に成り立つのか」を、ここで見極める。個人的には、精度そのものより、導入後に誰が撮像条件を見直し続けるのか。この地味な運用の話が、実は成否を分けている気がしている。
自社の製品は、ホイール寄りか、金属部品寄りか、それとも樹脂成形品寄りか。素材と課題を先に整理しておくと、相談が一気に具体的になる。
VISION WORKSの公式サイトには、こうした開発実績や対象別の事例が載っている。
Q. AI外観検査はどんな検査対象に向いていますか?
複雑な形状や光沢面、微細な色ムラなど、ルールベースの画像処理では線引きが難しい対象に向く。ホイールのような立体形状、金属のヘアライン面、透明・乳白色の樹脂成形品などは、素材ごとに照明設計を作り込む前提で考えたほうがよい。
Q. 導入までにはどれくらいの期間がかかりますか?
対象や検査項目の複雑さで幅が出る。VISION WORKSは構想、PoC、運用検証、本開発、導入・運用と段階を踏み、各フェーズで判断をはさむ。だからいきなり大きな投資を決め切る必要はなく、小さく試して見極められる。
Q. 熟練検査員はAI外観検査を導入すると不要になりますか?
完全には不要にならない。ホイール検査でも、撮像条件の調整や再学習には現場の知見が要った。AIは判定のばらつきを抑える手段であって、人が見るべき場面は残る。人とAIの分担で考えるのが現実的だ。
自社の製品がどの検査パターンに近いか気になった方は、VISION WORKSの開発実績ページで似た事例を確かめてみてほしい。個別の検査課題を相談したいときは、導入相談窓口から問い合わせるとスムーズです。
