コラム

不良品サンプルが少なくてもAI外観検査は検討できるか

この記事の要点

  • 良品の画像から学ぶ方式なら不良品が少なくても検討できるが、狙った不良を見つけられるかは不良が写った画像で確かめる
  • 学習用と評価用の画像は分けて管理し、同じ現物を撮った画像が両方に混ざらないようにする
  • 不良は名前だけでまとめず見え方の違いを書き出し、良品側のロット差や判断に迷う境界サンプルも用意する
  • 手持ちの写真は相談の出発点になるが、正式な学習や評価には予定する撮影条件に合わせた画像を使う
  • 現物が残っていない不良は「未収集」と明記し、今後の回収方法と評価の進め方を相談して決める

不良の発生頻度が低く、検査の自動化を相談したくても不良品が集まらない。過去に出た不良品を処分しており、現物が残っていない。こうした状況でも、AI(人工知能)を使う外観検査を検討できる場合があります。良品の画像から特徴を覚えさせる学習方法があるためです。ただし、狙った不良を検出できるか確かめるには、その不良が写った画像などを使った評価が必要です。手元にない不良は、未確認の範囲として残します。

相談前にそろえたいのは、手元のサンプルと、まだ確かめられない範囲を説明する情報です。同じ不良品を何度も撮影した画像と、別の製品で発生した異なる不良の画像では、確認できる内容が違います。ここではサンプルの準備に絞り、何を集めて、どこまで判断できるかを整理します。

良品学習と不良学習の違い

AI外観検査は、画像から特徴を学んだ仕組みを使い、製品表面の傷や汚れなどを調べる検査です。良品学習は、許容できる製品の見え方を学び、そこから外れる箇所を探す考え方です。このように通常と異なる状態を探す方法を、異常検知と呼びます。MVTecは、良品画像の特徴から新しい画像の逸脱を検出する方法を紹介しています。

一方、不良の画像や位置を教えて、特定の不良の特徴を学ばせる方法もあります。たとえばCognexの教師ありの検査では、検出したい不良領域の画像を使います。教師ありとは、人が正解を付けた画像で学習することです。傷と汚れを分けたいのか、良品から外れる箇所を探したいのかによって、準備する画像も変わります。

表1 学習方法によるサンプルの役割

方法学習で使う主な情報準備時の注意
良品学習による異常検知許容する良品の見え方良品のばらつきを含め、不良品で検出結果を確かめる
不良の特徴を教える学習不良画像と人が付けた正解狙う不良の形や大きさ、出る位置を確認する
方式を決める前の相談現物、手持ち画像、不良の説明不足分を明記し、撮影と評価の進め方を決める

良品学習なら、不良画像を学習に使わずに始められる方式があります。ただ、学習ができることと、狙った不良を見つけられると確認できることは別です。Cognexの公式資料でも、良品学習の検査を評価する段階では、既知の不良を含む画像の使用を説明しています。不良サンプルが少ないときほど、手元にある貴重な不良を何に使うか、先に相談しておきたいところです。

学習用と評価用の分け方

学習用は、AIに特徴を覚えさせるための画像です。評価用は、覚えさせていない画像に対する判定を確かめるために使います。さらに、調整中の確認に使う検証用を分けることもあります。MVTecの公式手順でも、学習の後にテスト用の画像で評価する工程を設けています。使用する製品ごとの呼び方と、各画像を使う目的を確認しましょう。

サンプルを渡すときには、同じ現物を撮った画像がどれか分かるようにします。同一品の連写や、元画像から切り出した画像を学習用と評価用に分けるだけでは、別の製品でも検出できるかを確かめにくいためです。担当者と分け方を決め、最終確認のために残す画像を、途中の調整で使ってしまわないよう管理します。

評価では、不良を良品として通す見逃しと、良品を不良として止める過検出を確認します。手元に大きな傷しかなければ、小さく薄い傷への対応は未確認です。試した範囲を、不良の種類や大きさごとに記録してください。少数のサンプルですべて判定が合っても、その結果だけで未確認の不良まで検出できるとは言えません。

図1 サンプルを学習と評価に使う流れ

枚数を数える前のサンプル整理

まず、不良を傷、汚れ、欠けといった名前だけでまとめず、検査したい違いを書き出します。たとえば傷なら、細い線状か広い擦れか、深さがあるか、端部に出るか、模様に重なるか。品質上の問題になる大きさも、分かる範囲で添えます。不良名が同じでも見え方が違うなら、別の確認項目として扱うと相談しやすくなります。

良品側も、見た目が整ったものだけを選ばないようにします。ロットとは、同じ条件などでまとめて生産、管理する製品の単位です。ロットによる色や表面模様の差、許容される加工跡があるなら、その範囲を確認します。Cognexも、運用時に想定する照明や色、向き、個体差を学習画像に含めるよう説明しています。

境界サンプルは、良品と不良品の判定の境目に近い現物です。たとえば、良否の限界を実物や画像で示す限度見本に近い薄い傷なら、合格側と不合格側を分けて用意し、誰がどの基準で判定したかを残します。検査員によって答えが変わるものは、判定保留として共有しましょう。曖昧な画像に無理に良否を付けると、システムの結果が合っているかも評価しにくくなります。

一覧には、品種、現物の識別番号、不良の説明、判定、製造日やロット、保管場所を記録します。画像がある場合はファイル名も対応させてください。収集できていない不良は、存在しないものとして扱わず、未収集と明記します。この一覧を基に、次に保管する現物や画像を決められます。

表2 相談前のサンプル一覧の記入例

区分書き添える情報未準備の場合
通常の良品品種、ロット、許容される見た目の差異なる生産時期から収集する予定を記入
既知の不良不良の種類、位置、大きさ、良否の根拠過去写真の有無と次回の保管方法を記入
境界サンプル合格側か不合格側か、判断した担当者判定保留のまま相談し、基準を確認
評価用の候補学習や調整に使用した履歴収集時期と用途の分け方を相談

現物と画像それぞれの準備

現物は、照明やカメラの向きを変えて、狙った不良を撮れるか試すために役立ちます。撮像とは、カメラで対象を画像として記録することです。画像は、そのときの見え方や判定結果を共有し、繰り返し比較するために使います。現物があるのか、画像だけなのか、両方あるのかを最初に伝えてください。

手持ちの写真は、相談の出発点になります。不良の位置が分かる全体写真と、状態を確認する拡大写真を用意し、寸法や撮影方向を添えましょう。ただし、スマートフォンで手に持って撮った写真の見え方と、実際のラインで固定したカメラの見え方は同じとは限りません。正式な学習や評価に使う画像は、予定する撮影条件に合わせて相談します。

元の画像は保存し、傷を強調する加工や画像の縮小をしたものとは分けます。加工した場合は、その内容も伝えます。反射のある面、曲面、透明な部品などは、不良の見え方を確認するために現物が必要か相談してください。現物を送る場合は、対象箇所が変化しない保管方法と、返却の要否も確認しておきましょう。

何を準備できるか整理しきれないときは、AI外観検査事前チェックシートを使えます。10問で検査対象や良否基準、ライン速度などを整理でき、Q6でサンプルの状況を確認します。空欄や不明があっても記入できるため、今ある資料と不足分を伝える準備に使ってください。

不良品が残っていない場合の収集計画

現物が残っていなければ、過去の検査写真や不良報告書、限度見本の有無を確認します。写真しかない不良、発生の記録だけがある不良を分け、分かる範囲で発生箇所や状態を説明します。この段階で評価できない不良は残りますが、どの不良を優先して集めるか、撮影テストを何から始めるかを相談する材料になります。

今後発生した不良を集める場合は、誰が回収し、どこへ保管し、何を記録するかを決めます。発生がまれなら、収集できた範囲で途中相談する日も設けましょう。たとえば外観が時間とともに変わる製品なら、発見直後に撮影する手順が必要です。保存数と併せて、収集済みの不良種類と、まだ集まっていない種類を確認します。

データ拡張は、元画像を回転させるなどして学習に使う画像を増やす処理です。加工や合成で画像を増やす案もありますが、元画像にない実際の傷の特徴や、撮影で見えていない情報を確認したことにはなりません。加工画像と実画像を区別し、実物に由来する未使用の画像で評価する計画を残してください。

相談時に決めたいサンプル計画

相談では、優先して見つけたい不良、許容できる良品の差、現在ある現物と画像、今後の集め方を共有します。そのうえで、撮影を試す現物、学習に使う画像、最終評価まで残す画像を決めます。必要枚数は、対象や方式、見え方のばらつき、評価したい範囲に合わせて確認しましょう。どの対象にも共通する固定枚数で、導入可否を判断することはできません。

試験後は、何を試し、何をまだ試せていないかを確認します。追加収集が必要なのか、撮影条件から見直すのか、次の作業を具体化してください。VISION WORKSの導入工程でも、光学機器とカメラの選定、簡易検証、性能評価を経て、本番ラインでの検証へ進む流れを案内しています。

よくある質問

Q1 不良品が一つもなくても相談できますか

手元の良品や過去写真、不良の説明を整理して相談することはできます。ただし、不良の検出をどこまで確認できるかは別途相談が必要です。未入手の不良を明記し、良品での撮影テストと不良の収集をどう進めるか確認しましょう。

Q2 良品学習なら不良品の準備は不要ですか

良品だけで学習できる方式でも、狙った不良が写った画像を使い、検出結果を確認します。不良画像を学習に使わない場合も、評価用の準備は必要です。

Q3 同じ不良品を何度も撮れば枚数を補えますか

撮影条件による見え方の確認には役立ちます。ただし、別の現物で発生する不良のばらつきまで増えるわけではありません。現物数と画像数をそれぞれ数え、同一品の画像を識別できるようにします。

Q4 わざと付けた傷をサンプルにできますか

撮影方法などを検討する材料にできるか相談してください。工程で自然に発生する傷と形状や見え方が違う可能性があります。人工的に作ったものだと明示し、実際の不良品による確認も計画します。

Q5 良否が曖昧なサンプルは除いた方がよいですか

判定保留として残し、迷う理由と現在の基準を共有してください。境界付近の確認に使えるかを相談できます。人が正解を決められない状態では、AIの判定が妥当か評価する基準も定まりません。

Q6 チェックシートで導入可否や必要枚数が分かりますか

導入可否や必要枚数を保証する資料ではありません。回答から、AI、あらかじめ決めた条件で判定するルールベース、まず撮像テストを行う進め方などの目安を整理し、必要サンプルや次の作業を相談するために使います。

まとめ

不良品サンプルが少ないときは、学習方法を決めつけず、今ある現物と画像、不良の種類、良否基準、足りない資料を整理するところから始めましょう。良品のばらつきと境界サンプルも確認し、学習用と評価用を分けて準備すると、試験で確かめられる範囲を具体的に相談できます。

VISION WORKSは、愛知県一宮市に本社を置く株式会社シーディアイのカメラソリューションブランドです。AIとルールベースを組み合わせた検査や、検査前後の自動化設備まで含めて開発、製造に対応しています。サンプルの状況と検査したい内容を整理してご相談ください。

まずは事前チェックシートに、準備済み、不足、不明を書き分けてみてください。サンプルだけでなく現状の検査や困りごと、目標も共有でき、追加で何を集めるか相談できます。